木下 杢太郎

海郷風物記

夕暮れがた汽船が小さな港に着く。

點燈後程經た頃であるからして、船も人も周圍の自然も極めて蕭かである。その間に通ふ靜かな物音を聞いてゐると、かの少年時の薄玻璃の如くあえかなる情操の再び歸り來るのではないかと疑ふ。

艀舟から本船に荷物を積み入るる人々の掛聲は殊に興が深い。

「やつとこ、さいやの、どつこいさあ。」

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