林 芙美子

蛙

暗い晩で風が吹いてゐました。より江はふと机から頭をもちあげて硝子戸へ顔をくつゝけてみました。暗くて、ざは/\木がゆれてゐるきりで、何だか淋しい晩でした。ときどき西の空で白いやうな稲光りがしてゐます。こんなに暗い晩は、きつとお月様が御病気なのだらうと、より江は兄さんのゐる店の間へ行つてみました。兄さんは帳場の机で宿題の絵を描いてゐました。

「まだ、おツかさん戻らないの?」

「あゝまだだよ。」

「自転車に乗つていつたんでせう?」

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