木下 利玄

山遊び

足守川にかゝつて居る葵橋を渡る頃は秋晴の太陽が豐年の田圃に暗く照つて居た。八幡樣の山では松の木立の下に雜木がほのかに黄ばんで櫨の木の紅葉の深紅なのが一本美しく日に透いて居るのが長閑に見えた。河原には、未だ枯れぬ秋の草が野菊交り、色の褪せた死人花交りに未だ青く殘つて居て、親馬についた子馬が其の草を食つて居た。澄んだ細い流れは、日を受けてその間に光つて居た。

隱亡の住んで居る部落を過ぎて山路にかゝる頃から日が曇つた。振りかへると、茂つた宮路山の後の、處々禿げた大きな山の上一帶が何時の間にか暗い灰色になつて、自分たちを威嚇して居る。宮路山から足守の町にかけてはうすい霧とも云へぬ程の水蒸氣がぼうつと下つて居る。

「天氣は大丈夫かしら」と自分は後に續いて來る今日の案内の爺さんにきいた。

「御心配なさいますな。大丈夫でござんす」と答があつた。其處で自分たちはすゝんだ。

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