小酒井 不木

誤った鑑定

晩秋のある夜、例の如く私が法医学者ブライアン氏を、ブロンクスの氏の邸宅に訪ねると、氏は新刊のある探偵小説雑誌を読んでいた。

「探偵小説家というものは随分ひどい出鱈目を書くものですね」と、氏は私の顔を見るなり、いきなりこういって話しかけた。

「え? 何のことですか?」と私は頗る面喰って訊ね返した。

「今、ジョージ・イングランドの『血液第二種』という探偵小説を読んだ所です。その中に出て来る医者が、血液による父子の鑑別法を物語っていますが、実に突飛極まることを言っていますよ、まあよく御聞きなさい。こうです。父と子の血液を一滴ずつ取って、それを振動器の中へ入れて、まぜ合せると、もし真実の父子ならば、血液を満している微小な帯電物の振動が一致するというのです。電子ではあるまいし、何と奇抜な説ではありませぬか?」

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