佐藤 垢石

季節の味

物の味は季節によって違う。時至れば佳味となり、時去れば劣味となる。魚も獣も同じである。七、八両月に釣った鰔は、肉落ち脂去って何としても食味とはならない。十二月過ぎてからとった鹿は、肉に甘味を失って珍重できないのである。

日本人の食品材料は、およそ四百種あるそうである。それに、病的といおうか悪食といおうか、いも虫、ヒル、みみずの類を生のまま食う者があるが。これらを加えたならば驚くべき数に達するであろう。その一つ一つの、食味の季節を調べてみたならば余程面白いことに違いない。

味の季節を知る者がいわゆる食通であって、料理の真髄を語り、弄庖の快を説く者は必ず物の性質をきわめておかねばならない。そうであるとするならば、いも虫、みみずも、ヒルも珍饌として味の季節を持っているであろうか。

物の盛期、必ずしも味の季節でないことは分かっている。稔熟の候を味の季節とし、他に多少の例外を求めることができるが、動物に至ってはいわゆる世人が口にする季節が味の季節ではないのである。

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