佐藤 垢石

桑の虫と小伜

私の故郷の家の、うしろの方に森に囲まれた古沼がある。西側は、欅や椋、榎などの大樹が生い茂り、北側は、濃い竹林が掩いかぶさっている。東側は厚い桑園に続いていて、南側だけが、わずかに野道に接しているが、一人で釣っているには、薄気味が悪過ぎる。

そこには、鮒と鯰が数多く棲んでいる。十一、二歳になる私の伜は、学校から帰ってくると、おやつを噛み噛み、釣り竿を担いでその沼へ出かけて行った。ある秋の日、この小伜がその古沼から大きな鮒を、一貫目近いほど釣ってきた。伜は、息をはずませながら、手柄を誇るのであった。

『それは偉い――ところで、餌はいつもの通り、みみずを使ったのか』

と、問うてみた。

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