佐藤 垢石

香魚の讃

一

緑樹のかげに榻(こしかけ)を寄せて、麥酒の満をひく時、卓上に香魚の塩焙があったなら涼風おのずから涎の舌に湧くを覚えるであろう。清泊の肉、舌に清爽を呼び、特有の高き匂いは味覚に陶酔を添えるものである。

今年は、鮎が釣れた。十数年振りで鮎の大群が全国の何れの川へも遡ってきたのである。青銀色の滑らかな肌を、鈎先から握った時、掌中で躍動する感触は、釣りした人でなければ知り得ない境地である。

六月一日の鮎漁解禁に、白泡を藍風に揚げる激湍の岩頭に立って竿を振る人々が、昨年よりも一層数を増したのも当然のことと思う。

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