斎藤 茂吉

愛国歌小観

今日は愛國歌について一言を徴せられたが、大東亞戰爭の勃發して以來、國民が奮つて愛國歌を讀み、朗誦し、萬葉集に載つた、『海ゆかば水漬く屍山ゆかば草むす屍大皇の邊にこそ死なめ顧みは爲じ』や、『けふよりは顧みなくて大君の醜の御楯といでたつわれは』の如きは、全く人口に膾炙せられるに至つた。また、私の先輩友人等から、雜誌により、著書により、ラジオ放送によつて、愛國歌がつぎつぎに發表せられたから、私が今日愛國歌について答へるとしても、自然重複してしまふのではあるまいかとおもつたが、併し縱しんば重複してしまつても、或は幾たび同じ歌が吟誦せられるにしても、あへて餘計だといふわけ合のものではあるまいから、左に、十人あまりの人によつて作られた愛國歌を抽出して置かうとおもつたのである。

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うらうらとのどけき春の心よりにほひいでたる山ざくら花 (賀茂眞淵)

しきしまの大和心を人とはば朝日ににほふ山ざくら花 (本居宣長)

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