折口 信夫

古代民謡の研究

一

おもしろき野をば 勿焼きそ。旧草に 新草まじり 生ひば生ふるかに(万葉集巻十四)

此歌は、訣つた事にして来てゐるが、よく考へれば、訣らない。第一、どの点に、民謡としての興味を繋ぐことが出来たのか。其が見当もつかない。「ふる草に新草まじり」といふ句は、喜ばれさうだが、昔の人にもさうであつたらうか。上田秋成などは「高円の野べ見に来れば、ふる草に新草まじり、鶯の鳴く」と借用してゐる。だが、かうした興味からだけで、もと謡はれたものとは言ひにくい。或はそこに暗喩を感じる事が出来たのかとも思ふが、此歌全体の大体の意義さへよく説かれてゐないのは、事実である。

生ひば生ふるかに

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