北条 民雄
盂蘭盆
一号室ではまた盆踊りの練習が始まつた。
「またも出ました三角野郎が、四角四面の櫓の上で、音頭とるとはおーそれながら――。」
さつきまで日支戦争の噂話で夢中になつてゐたのだが、それがちよつと途切れると突然一人がかう怒鳴りながら立上つた。すると勿ち戦争の話はけし飛んでしまひ、総立ちになつてどんどんと足を踏み鳴らし出した。
その声を聴きつけると、三号四号の連中もぞろぞろと集まつて来て、もう踊りの練習といふよりも乱痴気騒ぎであつた。果ては口々に自分勝手な唄を喚きながら、台所から持ち出されたバケツががんがんと叩かれるのであつた。