下村 千秋

曲馬団の「トッテンカン」

一

いちばん先に、赤いトルコ帽をかむった一寸法師がよちよち歩いて来ます。その後から、目のところだけ切り抜いた大きな袋をかむった大象が、太い脚をゆったりゆったり運んで来ます。象の背中には、桃色の洋服をきたかわいい少女が三人、人形のようにちょこんと並んでのっかっています。その後からは楽隊の人々が、みんな赤いズボンをはき、大きなラッパ、小さなラッパ、クラリオネット、大太鼓、小太鼓などを持って、足並そろえて調子よく行進曲を吹き鳴らして来ます。

さてその後からは、鉄のおりに入ったライオン、虎、熊などの猛獣が車に乗せられて来ます。つづいて馬が十頭ほど、みんなかわいい少女や少年を一人ずつ乗せて、ひづめの音をぽかぽかと鳴らしながら来ます。最後に赤や黄や青の旗をかついだ人たちが大ぜい、ぞろぞろとつづいて来ます。その旗にはそれぞれ「東洋一大曲馬団」「東洋一移動大動物園」「世界的大魔術」「世界的猛獣使」などという字が白く、染めぬかれてあります。

まっ先の一寸法師から、最後の旗持ちまでは百五十メートルほどもあり、その長い行列は、楽隊の吹き鳴らす行進曲で、何ともいえない気持ちよい調子につつまれ、何ともいえないにぎやかな色どりをあたりにふりまきながら、八月の朝のきらきらした太陽の光の中を進んで来ました。

青空文庫の作品カード