岸田 国士
道遠からん 四幕
原始の面影をそのまゝ伝へたやうなところと、近代の文明が到りついたところとを、あらゆる点で混ぜ合せた、ある時代の、ある地方の漁村である。
女性によつて社会及び家庭生活の主導権が握られてゐるために生じた風俗の転倒がみられるほか、人間の思想にも心理にも、その未来像らしいものは少しも示されてゐない。両性はそれぞれ、両性にふさはしい習慣のいくらかを失つてゐるかもしれないが、それにも拘はらず、男は男、女は女にすぎぬことをしばしば立証する。
第一幕
漁師の住ひとわかるひろい部屋。右手は勝手の土間に通じてゐる。部屋は中庭からすぐに上れるやうになつてをり、中央に低いテーブル、その周囲に腰掛と茣蓙。ラヂオと煽風器。