折口 信夫
国文学の発生(第二稿)
呪言の展開
一 神の嫁
国家意識の現れた頃は既に、日本の巫女道では大体に於て、神主は高級巫女の近親であつた。併し、其は我々の想像の領分の事で、而も、歴史に見えるより新しい時代にも、尚村々・国々の主権者と認められた巫女が多かつた。
神功皇后は、其である。上古に女帝の多いのも、此理由が力を持つて居るのであらう。男性の主権者と考へられて来た人々の中に、実は巫女の生活をした女性もあつたのではなからうか。此点に就ての、詳論は憚りが多い。神功皇后と一つに考へられ易い魏書の卑弥呼の如きも、其巫女としての呪術能力が此女性を北九州の一国主としての位置を保たして居たのであつた。