葛西 善蔵
子をつれて
一
掃除をしたり、お菜を煮たり、糠味噌を出したりして、子供等に晩飯を済まさせ、彼はようやく西日の引いた縁側近くへお膳を据えて、淋しい気持で晩酌の盃を嘗めていた。すると御免とも云わずに表の格子戸をそうっと開けて、例の立退き請求の三百が、玄関の開いてた障子の間から、ぬうっと顔を突出した。
「まあお入りなさい」彼は少し酒の気の廻っていた処なので、坐ったなり元気好く声をかけた。
「否もうこゝで結構です。一寸そこまで散歩に来たものですからな。……それで何ですかな、家が定まりましたでしょうな? もう定まったでしょうな?」