ルブラン モーリス

水晶の栓

※(始め二重括弧、1-2-54)一※(終わり二重括弧、1-2-55)夜襲

名にし負うアンジアン湖畔の夜半。小さい桟橋に繋いだ二隻のボートが、静かな暗にゆらりゆらりと揺れて、夕靄の立ち籠むる湖面の彼方、家々の窓にともる赤い灯影、アンジアン娯楽場の不夜城はキラキラと美しく水の面に映っている。時はちょうど九月の末、雲間を洩るる星の瞬きが二ツ三ツ。肌寒い風は水面を静に渡ってゆく。

アルセーヌ・ルパンはとある東亭の中で、煙草を燻らしていたが、やおら身を起すと桟橋の端近く水面を覗き込むようにして、

『オイ、グロニャール……ルバリュ……居るか?』

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