蒲原 有明
泣菫氏が近業一篇を読みて
穉態を免れず、進める蹤を認めずと言はるる新詩壇も、ここに歳華改りて、おしなべてが浴する新光を共にせむとするか、くさぐさの篇什一々に数へあげむは煩はしけれど、めづらしき歌ごゑ殊に妙なるは、秀才泣菫氏が近作、「公孫樹下にたちて」と題せる一篇なるべし。はしがきによりて窺へば、氏が黄塵の繁務を避けて、美作の晩秋たまさかに骨肉の語らひ甘かりし折の逍遙に、この一連珠玉の傑品あり。「ああ日は彼方」と調べそめし開語すでになみならぬ勢整ひて、戦ひの場に臨める古勇士の一投足に似たり。やがて一篇の主題たる公孫樹の雄姿を描きては
ここには長きその影を
肩に浴びたる銀杏の樹
天つ柱か高らかに