宮城 道雄

春雨

家の者が、「座右寶」に梅原氏の絵が出ていると言うので、私はさわらせて貰った。さわってみても私に絵がわかる筈はないが、それでもやはりさわってみたい。いろいろと説明を聞きながらさわっている中に、子供の時に見た絵を想像した。

子供の時に見た絵を思い出してみると、主に人物で、景色の絵などはかすかである。私の前にお膳があるとか、茶碗がのっているとか、火鉢があるということがわかると、みんな見えているように思うが、それが昔見た想像である。しかし、さわってみてもあまり見当は違っていない。

月とか、花とか、景色なども、少し見えていた子供の時のことを、今ではかえって美しく想像する。

よく人が、盲人は真暗のように思っているが、それは少しでも見えることで、私には暗いのも見えなくなっているので、結局、明るくもなく、暗くもなく、なんにもないことになる。

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