宮城 道雄

耳の日記

友情

いつであったか、初夏の気候のよい日に内田百間氏がひょっこり私の稽古場を訪ねて来て、今或る新聞社の帰りでウイスキーを貰って来たから※(「てへん+僉」、第3水準1-84-94)※(「てへん+皎のつくり」、第4水準2-13-7)にお裾分けしようと言われた。待っていた弟子達は百間先生が来たというので何かひそひそ騒いでいた。百間氏は私に稽古を片附けるようにと言うので私は稽古の合間合間に話をした。こういう時には心嬉しいので稽古もどんどん片附いてゆく。百間氏はこれから次第に暑くなると外へはあまり出掛けないと言う。また寒くなると少し暖かくなる迄は引籠もっていると言う。そこへ出不精な私がたまたま訪問しようと言うと、いや今※(「てへん+僉」、第3水準1-84-94)※(「てへん+皎のつくり」、第4水準2-13-7)に来られると二畳敷の所へ庭の外まで道具が並べてあるから迷惑だと言う。

こういう風でお互は七夕の星のようである。がしかし私は時々内田氏のことを思い出すとあの低い声が聞こえてくる。近頃はさすがの百間先生もビールには悩んでいられるようである。のどがカラカラになって水の涸れた泉のようであるという手紙を貰ったことがあった。

いつか帝劇の楽屋で会った時、たった一本であったがおみやげにと遠慮しながら出した。すると、※(「てへん+僉」、第3水準1-84-94)※(「てへん+皎のつくり」、第4水準2-13-7)、そう遠慮しなくともちょうど鏡が前にあるので、それにうつって二本に見えると言われた。また或る時弟子から貰ったのを届けさせたら、私のいる葉山へ、サンキュー・ビールマッチという電報が来た。私はそれ

青空文庫の作品カード