兼常 清佐
流行唄
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「流行唄というのは一体どういうものでしょう。」――ギンザ或春の夜、剽軽な雑誌記者が私にそんなことを聞いた。
難問である。一口にそれに答える事はむずかしい。それに答えるにはギンザを四丁目からシンバシまでくらい歩かなければならない。ただ流行唄はどんなものでないかという事なら、私には五歩行く間に明瞭に答えられる。――流行唄はラジオの国民歌謡のようなものではない。
流行唄には気分と感情がある。やさしさがある。なつかしさがある。暖さがある。捉われないものがある。強いられないものがある。二十四時間の周期で必ず私共の耳にはいって来る規律的な、計画的な音楽などは、どうも流行唄という事からは縁が遠い。また私も国民歌謡が非常に流行しているという話を聞いた事がない。