神西 清
夜の鳥
去年の夏のことだ。
H君夫妻が、終戦後はじめて軽井沢の別荘びらきをするといふので、われわれ旧友二三人が招かれたことがある。そのなかに、久しぶりでわれわれの前に姿をあらはしたG君もゐた。これは思ひがけなかつた。
われわれ仲間といふのは、ほんの高等学校の頃に同室だつただけの関係なのだが、そんな漠然とした若い時代の友情が、めいめい別れ別れに大学へ進んでからも、やがて社会へ出てからも、案外そこなはれずに続いてゐたのである。
同勢は六人ほどで、文科系統が多かつたけれども、G君は工科だつた。もう一人、魏さんといふ山東出身の留学生がゐて、これは医科だつた。のつぽといつていいくらゐ背の高い男で、とつつきの悪い不愛想なところがあつたが、実は飃々とした楽天家で、案外すみに置けない粋人でもあつた。魏怡春といふ名前が、まさに体をあらはしてゐたわけである。