神西 清

ハビアン説法

昨日はよつぽど妙な日だつた。日曜のくせにカラリと晴れた。これが第一をかしい。無精な私が散歩に出る気になつた。これも妙だ。北条の腹切り窟の石塔を、今のうちに撮影しておかうなどと、殊勝な心掛をおこした。これが第三にをかしい。おまけにまた……いや、順を追つて話すとしよう。

とにかく、カメラをぶらさげて家を出た。Nといふ小川を渡る。そこから爪先あがりになつて、やがて細い坂道にかかる。その坂道が、いつの間にやら、真新しいアスファルトに変つてゐた。

登りつめると、水色の高級車が一台とまつてゐて、その先にいきなり、思ひもかけぬ別天地がひらけた。

広びろした庭の小砂利をふんで、セーラー服や吊スカートの少女たちが、三々五々つつましやかに歩き廻つてゐる。ははあ、園遊会だな、と咄嗟に思つたのは吾ながら迂闊千万で、正面の数寄屋づくりの堂々たる一棟は、なんと大きな十字架を、藁屋根の上にそびえさせてゐるではないか。詳しく言ふと、藁屋根のてつぺんに白木の櫓を組みあげ、その中に鐘を釣り、その頂きに何やら黒ずんだ十字架を立ててゐるのだ。面白い趣向である。まさしくこれは南蛮寺だと、例の悪い癖で早速あだ名をつけた。

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