国枝 史郎
独逸の範とすべき点
第一次世界戦争での戦敗国といえば、いうまでもなく独逸であるが、その独逸から表現主義文学という、破天荒の形式の文学が産れて、世界の芸術界を驚倒させた。
ゲオルク、カイゼルなどがその代表的作家であり「朝から夜中まで」などがその代表的作品である。
表現主義は、一口にいえば、印象主義に反抗して成立した主義であり、心内の思想なり感情なりを、外界と交渉無しに、端的に放出させて芸術を形成するのを特色としている。
敗戦して心身ともに困苦の極にあった独逸人にとっては、従来の、自由主義的、自然主義的、印象主義的文学の、なまぬるい描写や記述や説明が物足らず、卒直に心内の苦悶や憂鬱や希望や怒りやらを叩き付けたような文学を要求した結果、自然発生的に、表現主義文学は産れたものであると云ってもよかろう。