上村 松園
余齢初旅
海を渡りて
年々、ずいぶんあわただしい生活がつづいている。こんな生活をいつまでもつづけていてはならないとおもう。
年中家にいて、電話がかかって来る。人がたえず訪ねてくる。ひっきりなしである、とてもめまぐるしい。その騒然雑然たるさまはとても世間の人たちには想像がつくまいとおもう。
世間の人々は、私の生活がこんなにわずらわしいとは思っていないにちがいない。もっとおちつき払った静かな深い水底のようにすみ切った生活とでも思っているにちがいない。しかし実際はそれとおよそかけはなれた生活である。