水野 仙子
犬の威厳
『あなたは、あなたの旦那樣の御容子をすつかりお氣に召してゐらつしやる?』と、いきなりよしのさんの言葉が私に向いて來た。
『え?』
私はたいへんどぎまぎした。そんな質問が私の上にまで、利口な聽手になつて、默つてばかりゐた私にまで及んで來ようとは、ちつとも豫期しなかつたのである。
それは先刻から隨分いろんな話が出だ。さうして今度結婚することになつた君島さんの大切な人の話から、男の風采つてものが暫く話題の花形になつた。男の仲間でいふ謂はゆる好男子と、女の眼から見た好男子とは形が違ふなんてことも大分言はれてゐた。