横光 利一
花園の思想
一
丘の先端の花の中で、透明な日光室が輝いていた。バルコオンの梯子は白い脊骨のように突き出ていた。彼は海から登る坂道を肺療院の方へ帰って来た。彼はこうして時々妻の傍から離れると外を歩き、また、妻の顔を新しく見に帰った。見る度に妻の顔は、明確なテンポをとって段階を描きながら、克明に死線の方へ近寄っていた。――山上の煉瓦の中から、不意に一群の看護婦たちが崩れ出した。
「さようなら。」
「さようなら。」
横光 利一
一
丘の先端の花の中で、透明な日光室が輝いていた。バルコオンの梯子は白い脊骨のように突き出ていた。彼は海から登る坂道を肺療院の方へ帰って来た。彼はこうして時々妻の傍から離れると外を歩き、また、妻の顔を新しく見に帰った。見る度に妻の顔は、明確なテンポをとって段階を描きながら、克明に死線の方へ近寄っていた。――山上の煉瓦の中から、不意に一群の看護婦たちが崩れ出した。
「さようなら。」
「さようなら。」