国枝 史郎

沙漠の歌

一

「……勿論あなたの有仰る通り学問の力は偉大です。世界の秘密を或る程度まで解剖することが出来ますからね。が併し偉大なその学問でも解釈することの絶対に出来ない不思議な事実が此の世の中に存在することも事実です。此の意味で私は此の世の中に幽霊のあることを信じます。理外の理ということをも信じます……それに就いて私は斯ういう事件を、私自身現在この耳で、私自身現在この眼で確めたことがございます!」

世界第一の神秘国であり世界第一の野蛮国である熱帯亜弗利加を踏破して、世界最大の探検家として其名を古今に謳われているスタンレーは葉巻をくゆらせ乍ら、赭黒い厳しい其顔に微妙な笑いを漂わせた。そして夫れから悠々と次のような物語を語り出した。

「曾て私が亜弗利加のサハラの沙漠を探検した時、次のような不思議な又哀れな事件に遭遇ったことがございます。

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