泉 鏡花

星女郎

一

倶利伽羅峠には、新道と故道とある。いわゆる一騎落から礪波山へ続く古戦場は、その故道で。これは大分以前から特別好物な旅客か、山伏、行者の類のほか、余り通らなかった。――ところで、今度境三造の過ったのは、新道……天田越と言う。絶頂だけ徒歩すれば、俥で越された、それも一昔。汽車が通じてからざっと十年になるから、この天田越が、今は既に随分、好事。

さて目的は別になかった。

暑中休暇に、どこかその辺を歩行いて見よう。以前幾たびか上下したが、その後は多年麓も見舞わぬ、倶利伽羅峠を、というに過ぎぬ。

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