国枝 史郎

西班牙の恋

一 熱病やみか狂人か

私の負傷は癒えなかったけれど、故郷を出てから六月目に、それでもマドリッドへ帰って来た。

私は誰にも逢わなかった。又逢いたいとも思わなかった。しかし、親友のドン・ムリオだけには逢って見たいような気持がした。

「カスピナに逢うのも悪くはない。私は誰でも構わない。慰めてくれる人が欲しいのだ」

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