久生 十蘭
キャラコさん
一
市ヶ谷加賀町から砂土原町のほうへおりる左内坂の途中に、木造建ての小さな骨董店がある。
西洋美術骨董、と読ませるつもりなのだろう、はげちょろになった白ペンキ塗りの看板に、"FOREIGN ART OBJECTS" と書いてある。
一間ほどの飾窓のついた、妙に閉め込んだ構えの、苔の生えたような家だった。人が出入りするのを見かけたこともなく、いつ覗いても、店のなかは仄くらくしずまりかえっていて、チラとも人影が動かなかった。
久生 十蘭
一
市ヶ谷加賀町から砂土原町のほうへおりる左内坂の途中に、木造建ての小さな骨董店がある。
西洋美術骨董、と読ませるつもりなのだろう、はげちょろになった白ペンキ塗りの看板に、"FOREIGN ART OBJECTS" と書いてある。
一間ほどの飾窓のついた、妙に閉め込んだ構えの、苔の生えたような家だった。人が出入りするのを見かけたこともなく、いつ覗いても、店のなかは仄くらくしずまりかえっていて、チラとも人影が動かなかった。