久生 十蘭
キャラコさん
一
麻布竜土町の沼間家の広い客間に、その夜、大勢のひとが集まっていた。温室の中のカトレヤの花のような、眼の覚めるような若いお嬢さんが六人ばかり、部屋の隅の天鵞絨の長椅子に目白押しになって、賑やかな笑い声をあげている。
そこへ、つい今しがた来たばかりの一人が無理に割り込もうとしたので、押しかえすやら、こねかえすやら、それこそ花園に嵐が吹き通ったような騒ぎになる。
こちらの土壇に向った大きな硝子扉のそばには、気むずかしい顔をした学者らしい四人の青年が、途方に暮れたようすで椅子に掛けている。どれもこれも黒っぽい地味な服を着て、もっそりとした恰好で坐っているので、ちょうど、黒い大きい田鶴でもそこに棲っているように見える。