邦枝 完二

乳を刺す

星灯ろう

陰暦七月、盛りの夏が過ぎた江戸の町に、初秋の風と共に盂蘭盆が訪れると、人々の胸には言い合わせたように、亡き人懐かしいほのかな思いと共に、三界万霊などという言葉が浮いてくる。

今宵は江戸名物の、青山百人町の星灯ろう御上覧のため、将軍家が御寵愛のお光の方共々お成りとあって、界隈はいつもの静けさにも似ず、人々の往き来ににぎわっていた。

「なアお牧、お春や常吉は、まさか道草を食ってるわけじゃあるまいね、大層遅いじゃないか」

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