長谷川 時雨

大川ばた

大川は、東京下町を兩斷して、まつすぐに流れてゐる。

その古の相貌は、まことに美しい潮入り川で、蘆荻ところどころ、むさしの側は、丘は鬱蒼として、下總野の、かつしかあがたは、雲手の水に水郷となり、牛島の御牧には牛馬が放牧されてゐた。北には筑波が朝紫に、西に富士はくれなゐの夕照にくつきりと白く、東南に安房上總は青黛のやうに、海となる空のはてに淡い。

このころこそ全くの隅田川で、

名にしおはばいざこと問はん都鳥我思ふ人はありやなしやと。

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