木村 荘八

銀座の柳

昔の面影を偲ぶやうな今の東京の材料をとの意向だが、存外はづれの「淀橋」といつたやうなところにその「昔の面影」があるやうである。しかし「昔」もこれはまた「大昔」であつて、戦災であたりが広漠となつたために、むかし武蔵野の野川であつた頃にはこの辺かくもあつたらうかと思はせる、早くいへば、地形的回顧を人に与へるものがある。

――それでは余り「昔」すぎるだらう。

七月一日(昭和廿一年頃)、とりあへず銀座へ出て見た。しかし銀座あたりの「昔」は、よしんば、その形骸が備はつてゐようとも、大正震災この方三変四変してゐるから、遠い回顧の跡は無い。まして今度の変で銀座はまた全然新規のものになつてしまふ様子だ。

銀座の夜店の図

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