正岡 容
随筆 寄席囃子
寄席囃子
当代志ん生の味
当代の噺家の中では、私は文楽と志ん生とを躊躇なく最高位におきたい。文楽は菊五郎、志ん生は吉右衛門、まさしくそういえると思う。ただし、芸質の融通無礙なところでは志ん生の方が菊五郎らしく、双方の芸を色彩にたとえていえば文楽の方がハッキリと明色で六代目らしい。そのくせ一字一劃を疎かにしない文楽の小心さ几帳面さは吉右衛門を思わせ、志ん生のいい気な図太さは六代目に似かよっているのだからなかなかおもしろい。
最近鴨下晃湖画伯も「落語三人男」と題してほぼ私と同様の意見で文楽、志ん生、可楽について論評されたが、その中の志ん生に関するくだりだけを引用してみよう。