正岡 容

小説 円朝

序

 夕月淡く柳がくれの招き行燈に飛ぶ禽落とす三遊亭圓朝が一枚看板、八丁荒しの大御所とて、焉んぞ沙弥より長老たり得べけむや。あわれ年少未熟の日の、八十八阪九十九折、木の根岩角躓き倒れ、傷つきてはまた起ち上がり、起ち上がりてはまた傷つき、倦まず弛まず泣血辛酸、かくして玉の緒も絶え絶えに、出世の大本城へは辿り着きしものなるべし。即ち作者は圓朝若き日のそが悶々の姿をば、些か写し出さむと試みたりけり。拙筆、果たしてよくその大任を為し了せたるや否や。看官、深く咎め給わざらむことを。

梨の花青し 圓朝の墓どころ

(昭和癸未睦月下浣[#改行]於 巣鴨烟花街龍安居)   作者[#改丁]

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