橋本 五郎
殺人迷路
見えざる敵
新橋駅で雑誌記者の津村と別れた探偵作家の星田は、そこから自動車を拾って一先ず自分の宅へ引上げてきた。
捕捉することの出来ない不安は、次第にじりじりと胸元へこみ上げてくる。つい、先程まで冗談だとばかり思っていた事が、急に恐ろしい現実となって襲いかかってきたのだ。しかも、この忌まわしい、好もしからざる事件に於て、自分はまんまと犯人の役割を背負込まされているのだ。
鎌倉からの帰りがけの電車の中で、自分の指紋を見せられた瞬間から、津村は急に、不機嫌に、黙りがちになってきたではないか、あの男でさえが、そろそろ自分を疑い出したのではあるまいか。