折口 信夫

春日若宮御祭の研究

おん祭りの今と昔と

春日のおん祭りに関しては、一番参考になるのは「嘉慶元年春日臨時祭記」のやうです。この本は南北合一の頃の記録であるが、元々若宮祭りの記事ではありません。所が、これが臨時祭りの記録であつたのかといぶかるほど、只今の若宮祭りの行事と、ある点までぴつたりと合つてゐる。役々の名前なども大方合つてゐる。其より昔の臨時祭りは、ずつと古い記録で見て、嘉慶記の様な風のものではないだらうかと思はれる程だが、事実さう書いてあるのだから、此頃の事として間違ひはあるまい。今行はれてゐる若宮祭りは、此臨時祭記によつて組織し直したものではないかと思はれるほど、よく似てゐる。

しかし、同時に春日祭り――普通、申祭りと通称する――も、今行はれてゐる若宮祭りと似たところがあります。今の若宮祭りといふのは、春日祭りと臨時祭りとを突き交ぜたものだといへば、大体さうした疑問は釈ける様な気がします。若宮祭りがある時代衰へたのを復興する時に、さうしたともとれるが、どうも春日祭りとしては、却つて此方が盛んであつたらしいから、其について又色々手入れをする機会があつたのではないかと思はれます。一つは此御祭は盛んは盛んでも、本宮の二度の恒例臨時の祭りと比べて、本質としての重要性が軽いとでも言ふか、まあそんな事から、時々延期したり、延期したまゝ挙行せずにすました年もあり、又もし行つても極々内々ですました年も度々あつたらしく、頻々と間隔が出来て居ります。勿論室町以後の記録です。其以前にもさういふ事がなかつたとは言へないとすれば、毎年行つて居なければ段々変形し、忘却して来る様な事はあつたといへます。

今度、二度目に若

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