折口 信夫
鶴が音
いかに、奏聞まをすべき事の候。毎年の嘉例の如く、鶴亀を舞はせられ、その後、月宮殿にて舞楽を奏せられうずるにて候。……謡曲鶴亀
所謂五風、十雨が、度に過ぎて、侘しかつた旧年の夢についで、今年はほゝ笑ましい現実の暦を捲き返したいものである。そのための祝言にもなれば、この短文の作者なる初老の翁は望外の慶びとする。
鶴亀の能は、極めての短篇で、いはゞ祝賀の舞を催さうとするだけの開口の文句に過ぎない。してなる皇帝に、大臣わきが次ぐといふ異風でもあり、古式とも見える演出法を持つた曲である。
皇帝「ともかくも、はからひ候へ」