木村 荘八
東京の風俗
一、東京「パースペクチヴ」
亡友岸田劉生が昔、そのころ東京日日だつた今の毎日新聞へ、東京繁昌記の画文を寄せて、「新古細句銀座通」=しんこざいくれんがのすぢみち=と題する戯文をものしたことがある。(昭和二年)戯文といつても筋の通つたものだし、殊に絵は出色のものだつたが、仕事の範囲の相当手ひろかつた故人にしては珍らしく、印刷ものにこと寄せて「さしゑ」の仕事を遺したものとしては、これらがあと先きに例のない逸作であつた。
編輯部から嘱されて「東京の風俗」といふものを、その岸田の轍に学び、自分の絵と文とで書くけれども、掲題の「東京の風俗」を僕は「パースペクチヴ」で書くつもりである。「バーズ・アイ・ビュウ」には扱はない。
――東京「バーズ・アイ・ビュウ」ならば材料を広く横にとらなければならないが、パースペクチヴで、縦に行くならば、材料は狭くとも主意は達しようと、勝手な解釈に。