海野 十三
仲々死なぬ彼奴
一
大熊老人にとって、凡そ不思議な存在は、少年喜助であった。
喜助君なら、今でも一緒に抱いて寝てやってもよいと思っているのであった。今年廿二歳になって、たいへん大人びてきた喜助君の方でも、抱かれることには大いに賛成であろうと思われる。
大熊老人といえば、あの人かと誰でもがすぐ思い出すほどの金満家[#ルビの「ミリオネア」は底本では「シリオネア」]であった。八十二歳になるというのに、腰一つ曲らず、流石に頭髪だけは霜のように真白になっては居るが、肉付は年増女房を思わせるほど豊満で、いつも赭顔をテラテラさせているという、怖るべき精力老人であった。