夢野 久作

殺人迷路

意外な夢遊探偵

一方、星田代二と別れた雑誌記者の津村は、殆んど逃げる様にして新橋駅構内を出た。そうして何処をドウ通り抜けて来たか、わからないくらい混乱しいしい銀座の左側の通りをセッセと歩き出した。

けれども、それから人ごみの中を二三百歩ばかり一直線に歩いて来ると彼はハタと足を佇めた。両手をポケットに突っ込んで、うなだれたままホッと溜息をした。殆んど不可抗的な力に直面させられた気持で……

……俺は星田を救わねばならぬ。……自分の先輩とも、兄とも、又は一種の保護者とまでも感じて、尊敬していた星田を、鉄のバイトみたようにシッカリと掴んでいる「完全な犯罪」の機構の中から救い出さねばならぬ立場に現在タッタ今置かれて居るのだ……こうして銀座の人ゴミの中をタッタ一人でテクテク歩きながら……

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