織田 作之助

民主主義

彼は人気者になら誰とでも会いたがった。しかし、人気者は誰も彼に会おうとしなかった。いうまでもなく彼は一介の無名の市井人だった。

野坂参三なら既にして人気者であり、民主主義の本尊だから、誰とでも会うだろう。彼はわざわざ上京して共産党の本部を訪問した。ところが、党員が出て来ていうのには、

「野坂氏は多忙で誰とも会いません。用件は私が伺いましょう」

用件はなかった。すごすご帰る道、仙台に板垣退助の娘がいることを耳にした。板垣退助こそ民主主義である。彼は仙台へ行った。宿につき女中にきくと、

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