堀 辰雄
噴水のほとりで――
私達は水族館を出ると、觀音堂の裏をすこしばかり歩いた。大きな樹があつた。噴水があつた。鳩が不器用に飛んでゐた。五月の夕暮だつた。
「乞食つて、君、……」
突然、あちらこちらのベンチの上に落葉のやうにころがつてゐる乞食の群を見ると、私の友人が私に言つた。
「……とてもハイカラぢやないか。あの乞食を見たまへ。巴里でも、ベルリンでも、すこしもこれと異はないぜ。」
堀 辰雄
私達は水族館を出ると、觀音堂の裏をすこしばかり歩いた。大きな樹があつた。噴水があつた。鳩が不器用に飛んでゐた。五月の夕暮だつた。
「乞食つて、君、……」
突然、あちらこちらのベンチの上に落葉のやうにころがつてゐる乞食の群を見ると、私の友人が私に言つた。
「……とてもハイカラぢやないか。あの乞食を見たまへ。巴里でも、ベルリンでも、すこしもこれと異はないぜ。」