堀 辰雄

続プルウスト雑記

プルウストに關する三つの手紙を神西清に宛てて書いてから數ヶ月が過ぎた。

その間、私は心にもなく、プルウストの本を殆ど手離してゐた。

唯、ときたま、ガボリイのプルウスト論の中で見つけた「私の月日が砂のやうに私から落ちるのを感ずる悦び」と云ふクロオデルの言葉が思ひがけずに私の口をついて出てくるやうな瞬間があつた。そしてちよつとの間だけ、私はその文句そつくりの悦びに浸つてゐるのだつた。

そしてその時はまた、私に、數ヶ月前プルウストを夢中になつて讀んでゐたときの思ひ出がいつの間にか蘇つてゐる時でもあつた。

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