リルケ ライネル・マリア

冬

まだすこしもスポオツの流行らなかつた昔の冬の方が私は好きだ。人は冬をすこし怖がつてゐた、それほど冬は猛烈で手きびしかつた。人はわが家に歸るために、いささか勇氣を奮つて、ベツレヘムの博士のやうに、眞つ白にきらきらしながら、冬を冒して行つたものだ。さうして私たちの冬の慰めとなつてゐた、すばらしい焚火は、力づよく活氣のある焚火、本當の焚火だつた。人は書きわづらつた、すつかり指がかじかんでしまつたので。けれども、助力し合つて、夢みたり、失せやすい思ひ出をすこしでも引きとどめたりすることの、何んといふよろこび……思ひ出はすぐそばにやつて來て、夏のときよりかずつとよくそれが見られたものだ。……人はそれに彩色までした。かうして室内ではすべてが繪のやうだつた。

それにひきかへ戸外では、すべてが版畫の趣になつてゐた。 さうして樹々は、自分たちの家で、ランプをつけながら仕事をしてゐた……

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