三好 十郎
詩劇「水仙と木魚」
プロローグ
私は京極光子と申します年は十七年三カ月学問は中学を卒業しただけで病気のために寝たきりで自分一人では一メートルも動けない詩を読んだのは宮沢賢治とホーマアのオデッセィの二冊だけですその私が、おどろくなかれ水仙と木魚という題で長い長い詩を書きますからどうぞ皆さん覚悟してくださいなこの中で私は人類よ、思いあがって水爆や原爆なんぞをポカポカとおっことして地球をこなごなにしないように気をつけろ!アメリカとソビエットよ、のぼせあがってしたくもない戦争をしなくてはならぬようなハメに持って行かないように気をつけろ! とオトナたちを叱ってやろうと思います
びっくりなすった?実はそれウソですの私がホントにここに書きつけるのは小さな小さなことばかりでエンの下の蟻の巣の中で蟻がどんな声で泣き悲しんだかということや二番目の水仙が芽を出したのは二月の幾日の朝であったかということやカリエスの腰がどんな日に一番痛むかということやすべてそういう、人さまにはどうでもよいことばかりをゴタゴタと書きつけて昇さんに見せようというだけです
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