堀 辰雄

ランプの下で

山にやつて來てから、もう隨分長いこと書かない。去年はほんたうに何も書きたくなかつたので、あつさりと何も書かなかつたが、今年はそんな氣持はかなぐり棄てて、ひとつうんと書いて見るつもりだ。

しかしまだ、何が書けるのやら、自分にも見當がつかない始末だ。が、今年は――秋にでもなつたら、ひよつとしたら詩が書けさうな氣がしてゐる。もし書けたら、一ぺんにどつさり發表する。それまでは、相變らず、隨筆を書いたり、飜譯などをやつてゐるより仕樣があるまいと思つてゐる。まあ、ひとつ本當の仕事は秋まで待つてゐて貰はう。

この春には、その代り、本を二三册出す。ついでだから本の廣告をしてしまへ。

※(アステリズム、1-12-94)

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