堀 辰雄

ヴェランダにて

一九三五年晩秋。或高原のサナトリウムのヴェランダ。二人の患者の對話。

A 君はよくさうやつて本ばかり讀んでゐられるなあ。

B うん。どうも書くことを禁ぜられてゐると、本でも讀んでゐるより他に時間のつぶしやうがないからね。しかし、かうやつて本でも讀みながら、それとなく次の仕事のことでも考へてゐるうちが、僕等には一番愉快なのだよ。

A その本は何だい?

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