平林 初之輔
少年探偵呉田博士と与一
第一夜
「お父さん、今日は何か変わったことがあったかい?」
「また、六つになる子供がさらわれちゃったよ。これで去年から三度目だ。お前なんかも用心せんと危ないよ。今日さらわれたのは、お前が行ってる学校の正門の筋向かいの文房具屋の子供なんだよ」
「馬鹿にしていらあ、僕なんかもう中学の三年じゃないか、もう二ヶ月もたったら四年で、来年は高等学校へはいるんじゃないか。だけれど、ほんとうに、あの文房具屋の子供がさらわれちゃったのかい? あの子は録ちゃんといってね、可愛い子だったよ」