林 不忘釘抜藤吉捕物覚書一がらり、紅葉湯の市松格子が滑ると、角の髪結海老床の親分甚八、蒼白い顔を氷雨に濡らして覗き込んだ。「おうっ、親分は来てやしねえかえ、釘抜の親分はいねえかよ。」濛々と湯気の罩った柘榴口から、勘弁勘次が中っ腹に我鳴り返した。青空文庫の作品カード