林 不忘

釘抜藤吉捕物覚書

一

がらり、紅葉湯の市松格子が滑ると、角の髪結海老床の親分甚八、蒼白い顔を氷雨に濡らして覗き込んだ。

「おうっ、親分は来てやしねえかえ、釘抜の親分はいねえかよ。」

濛々と湯気の罩った柘榴口から、勘弁勘次が中っ腹に我鳴り返した。

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